化学物質過敏症を防ぐには、まずは室内の空気から

化学物質過敏症を防ぐには、どのような生活をすればいいのでしょうか?化学物質にできるだけ接触しないように生活すればいいと分かっていても、世に出回っている製品の殆どはなんらかの合成化学物質を使用しており、また、それらの多くは目に見えるものではありません。「この製品の製造にはこれらの合成化学物質を使用しています」、と事細かく書いてあればいいのですが、そんなものはどこにも見当たりません。

化学物質過敏症の発症となる原因となるものの半数以上が室内空気汚染であるという、北里研究所病院臨床環境医学センターの坂部貢先生によるデータがあります。1)

化学物質過敏症の原因
シックハウス  59%
農薬・殺虫剤      21%
有機溶剤            8%
その他      12%

*患者221名(女性164名、男性57名)。6~62歳(平均42歳)。

このデータから、多くの化学物質過敏症は、室内環境の化学物質による暴露が原因であるということが分かります。生活環境の空気に含まれる化学物質(空気の汚れ)により、化学物質過敏症になってしまうようです。

ではなぜ空気がそんなにも体に影響を与えるかということですが、それは食品等から体に取り込む量よりも、呼吸は遥かに多くの化学物質を取り込んでしまうからです。『化学物質過敏症 ここまできた 診断・治療・予防法』石川 哲・宮田幹夫著の中でこう記してあります。

” なぜ空気の汚れがこのように問題になりやすいのでしょうか?飲食物は一般に1日に2キログラムも取りませんが、空気は15~20キログラム近くという大量の気体を体の中へ取り込んでいるのです。おまけに飲食物の汚染物質は吸収された後に、肝臓という解毒器官を通り、ある程度までは解毒されて安全性が確保されやすいのです。

一方空気、つまり大気の汚染物質は肺から直接血液に溶け込み、身体中を走り回り、中枢神経系にまで到達してしまいます。また一部は喉や器官などの粘膜に直接触れて、これを刺激します。さらに臭神経を伝わり、大脳辺縁系を経由して、直接脳まで流れていくことが Meggs らの研究で明らかになっています。

大脳辺縁系とは視床下部と大脳新皮質の中間に位置して連絡しており、人の意欲や情動と言う基本的な精神機構に関わっている部分です。視床下部は自律神経の中枢です。したがって、吸い込んだ空気の汚染物質は神経の影響を来します。”2)

これを読むと、なぜ化学物質過敏症の発症となる原因の半数以上が、室内空気汚染であるのかということがよく理解できます。また、化学物質過敏症がなぜ心因性のものではないかと疑われるのか、さらに、化学物質過敏症は発症者に鬱症状をもたらすのかがよく理解できます。

「シックスクール」という単語を目にするようになり、子どもたちが通う学校の環境汚染が問題になっています。不登校、多動症、キレる子どもたち、いじめ。これも、子どもたちの幼い脳が、化学物質に侵されたためではないかと考えられています。

今年は猛暑が続き、エアコンが設置されていない学校に対して、なぜ設置しないのか?という論議が巻き起こりました。実際に、いくつかの自治体では急遽学校にエアコンの設置を決めたようです。ですが、これは別の問題を引き起こすのではないかと思います。閉め切った室内では、化学物質による室内空気の汚染濃度が高まるからです。

学校のエアコン論争にはこの観点が抜け落ちていました。すこし冷静に進めていただきたいものです。もちろん、僕も学校にはエアコンは必要だと思っています。ですが、それにはあくまで教室が、閉め切ることで化学物質による汚染濃度が高まらない環境であること、というのが条件になるかと思います。

少し古い資料になりますが、住宅における室内空気質の実態について調査をした論文がありましたので紹介しておきます。

この論文では、住宅の室内汚染度の計測と、季節によるその変化、その対策が示されています。対策の中では、

” 日常生活においては換気をすることが重要である. 図6は部屋を締め切ってからのホルムアルデヒドの増え方と換気をしてからの減退の様子を示している. 開口部を閉めきると1時間半後には5時間閉めきったときの70%に達している. 換気をすると短時間で外気レベルになっている. このことからも換気の有効性がよくわかる.”3)

と書いてあります。換気はコストがかかりませんので、すぐに取り入れることができる有効な手段だと思います(冷気、暖気は逃げてしまうので、そのコストはかかりますが)。ただし、これも汚染の原因となるものがどこにあるのかにより、換気が室内空気の汚染に対して常に有効であるとは一概には言えないと思います。

例えば、家の隣にクリーニング工場があってそこからの排気が入ってきたり、交通量の多い大きな幹線道路のそばに家がある場合や、周りが畑や田んぼに囲まれている場合は農薬の飛散など、外気のほうが汚染されている場合があるからです。PM2.5もあります。ですから、これも冷静に対処する必要があります。

幸い、化学物質による汚染濃度は計測が可能です。計測機器が販売されていますし、計測を請け負ってくれる会社もあります。精度の高い計測器は大変高価なため購入するのは厳しいと思いますが、例えば引っ越しなどで新しい住居を探す場合は、契約の前に専門の会社に測定を依頼するなどしたほうがいいと思います。計測であれば、それほどコストはかかりません。

また、最近は安価な計測器も販売されています。精度は本格的なものには劣るとは思いますが、手元に計測できるものがあれば、室内の化学物質による汚染濃度を換気などによりある程度はコントロールできると思います。また、ご存知の通り、空気清浄機は閉め切った室内において化学物質による汚染濃度を下げることができます。

化学物質に汚染された環境の中で、僕たち大人は家族、子供を守っていかなくてはなりません。そのためには、室内の化学物質による汚染に関する知識は必須だと思います。

参考サイト・文献

  1. 化学物質過敏症支援センター
  2. 石川 哲・宮田幹夫(1999)『化学物質過敏症ーここまできた 診断・治療・予防法』株式会社かもがわ出版.
  3. 疋田洋子(2001)「化学物質過敏症と室内空気汚染」環動昆第12巻 第4号,p195-202.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です